

仏教には顕教と密教の2種類があります。顕教とは、お釈迦さまの教えを言葉ではっきり伝えるものです。それに対し、密教では言葉だけでは表せない物事の真理や、生きながら仏になる可能性を説いています。「秘密の教え」とも言われる密教は、顕教の対義語と言えます。
この「秘密」とは、隠し事をいうのではなく、万物の奥には、およそ人知では計り知れない不思議な力が働いていることを意味します。民衆に向けて広く教義を説く顕教とは異なり、師から弟子へと、秘密裏に相承されるものであるのが特徴です。
真言密教における教主、大日如来は、宇宙の真理・法則そのもので、この世の万物全てが大日如来に由来していると説かれます。それはあなたの中にあってあなたを作り上げているものであり、土や 木、草木や虫、鳥や獣すべてが大日如来に由来しています。遮るものが無い太陽の光のように、遍く世界を照らしているのです。
大日如来の教えは人間の言葉では書かれておらず、人間には深遠で計り知れません。しかし、身口意(後述)の動きが大日如来と一体となるよう修行をすれば、生きながらにして、仏となることができると説いています。
密教は大日如来がその秘密を解き明かした教えをまとめた経典が根本となります。今を生きるわたしたちも、千年前も、人間という存在は同じです。人生を考えるとき、この密教の智慧、世界観を知ることは、とても意義い経験であるといえるでしょう。


密教の「秘密」を紐解く
例えば、お米。作るには、農家の人の働きのみならず、土の中の無数の生き物、きれいな水や、日光など、全体が上手く回ることが必要です。
毎朝、普通に日が昇り、水が川を流れることも、科学的な理論を超越した神秘があると感じることはありませんか。それこそが、万物の奥に潜む大きな「秘密」であると説くのが真言密教の教えなのです。


お大師さま(空海)は密教には、2つの秘密があると説いています。
1)如来の秘密―万物に奥にある秘密(何事もその働きがなければ成り立たない)
2)衆生の秘密―人の心は、目先の利害や、思い込みなどの迷いに覆われていて(煩悩)万物の神秘を観ようとしない。


密教は、7~8世紀ごろのインドで、「大乗仏教」の一派として生まれました。「大乗」のなかに含むこともありますが、一方で「大乗」とは別の金剛乗とされる場合もあります。大乗仏教は自分が救われるだけでなく、他人を思いやる、菩薩の精神に重きを置いています。菩薩とは利他の精神を全うした、釈迦如来の前世の名称です。
仏教が誕生したインドにおける密教の歴史は、遥かインダス文明まで遡ります。4~5世紀の陀羅尼経の出現に始まり、7世紀には、修法の目的が「除災招福」から「成仏」へと大きく転換しました。
こうして7~8世紀に成立した「大日経」と「金剛頂経」において、「成仏」を目的とする教義の体系化が完成し、密教は従来の顕教的な陀羅尼経典とは一線を画すに至りました。
インドでは、7~8世紀に完成した密教を、中期密教、それ以前を前期密教、8世紀以降に「金剛頂経」系の仏教がタントリズム(Tantrism ※仏教における密教の呼称)の影響を受け、発展したものを後期密教と呼んでいます。
中期密教の主な概念として、
①本尊が大日如来であること、
②成仏が主たる目的であること、
③身体と言葉と精神を駆使した三密行による修法を行う、
④諸尊の集会、曼荼羅の表現、
であり、密教では、仏になるのではなく、既に仏であると説いており、お釈迦様入滅後500年後に登場したこの密教は、仏教の究極のかたちであり/最終形/そして結論であるといえます。お釈迦様は悟りを開かれましたが、「あなたは本質的に仏である」と説いたのは、大日如来とされます。
密教は、奈良時代(前期密教)には既に日本に伝えられていましたが、儀礼や修法を含んだ体系的なものではありませんでした。平安時代に「大日経」と出会ったお大師さまは、「文に臨んで、心昏し(経典を読んでもよく意味が分からない)」と述べており、当時において、この密教経典を正しく理解し、しっかりと講説できる人物は居なかったことがわかります。このことから、お大師さまは「大日経」の深い真意を求めて、唐へ渡る決心に至ったのです。また、この時期の密教を雑部密教(ざんみつ)と呼んでいます。
804年、唐に渡った最澄(天台宗開祖・後の伝教大師)とお大師さまは、密教の儀礼や修法の実践を伴った「体系的な仏教(密教)」を日本に持ち帰りました。これ以後の密教を(最澄は天台宗に伝わる密教である台密<たいみつ>、お大師さまは嵯峨天皇より託された東寺を根本道場とした東密<とうみつ>)正統密教(純密)と呼んでいます。
(※現在の定説では、後期密教は日本には伝わらなかったとされます。)


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